症例7 レントゲン撮影の種類について
今回はレントゲン検査について主に、歯科用のデンタルエックス線撮影について、お伝えします。
歯科医院では様々な検査を行いますがその中のひとつがレントゲン検査です。
硬組織(歯や骨)の状態を、表層から肉眼では見ることのできない深部まで観察する事ができ、虫歯や歯周病の状態を把握するための有効な検査法です。
レントゲン検査には主に
デンタルエックス線撮影 パノラマエックス線撮影 セファロエックス線撮影 CT撮影
などがあり、それぞれ利点、欠点があり、目的に応じて使い分けられています。
その中でもデンタルエックス線撮影は歯科におけるもっとも基本的なレントゲン検査です。
デンタルエックス線撮影は約3cm×約4 cmのフィルムをお口の中に入れて撮影するため、患者さんにとっては苦しい方もおられます。
撮影範囲は狭いですが、歯、歯周組織、歯石の状態、根管治療の状態、被せ物の適合などが最も詳細に観察できます。
フィルムの位置付けやエックス線の照射方向などは術者が設定するため規格通りに撮影するためには技術が必要です。
理想的なデンタルエックス線像は以下の項目を満たしたものを言います。
- 被写体がフィルムのなかに完全に収まっている
- 被写体の両隣在歯が完全に写っている
- 咬合平面がフィルム縁と平行に近い状態にある
- 被写体が実物大で変形していない
- 被写体のそれぞれの線が鮮明かつ明瞭である
赤矢印→歯槽骨
青矢印→歯
緑矢印→メタルインレー(銀歯の詰め物)
規格性のある撮影とは
初診時から、治療中、定期的なメインテナンスと、時系列にレントゲン画像を並べた際に、常に一方向から撮影がされているということです。
これは定点観察ともいい長い長い経過観察の中で、虫歯や歯周病などの細かい兆候にいち早く気づくためと、術者が自身の治療のフィードバックをするためには必須と考えております。
レントゲンはいつも同じ大きさ、同じ方向から撮影する必要があります。
右のりんごと左のりんごはカメラの方向がたった10度ほど違うだけですが、写り方はこんなにも違います。
全く同じリンゴでも、ここまで写り方が違うと、この写真の比較に客観性は乏しくなってしまいます。
もっと言えばレントゲンは白黒写真なので、さらに分かりにくいです。
左のリンゴが歯で、かじったところが虫歯だとすると、ひょっとすると左のレントゲンでは虫歯に気づかない可能性もあります。
デンタルエックス線写真1枚の撮影では、お口の中全ての歯を撮影する事ができないため全体的に把握する際には
10枚法や14枚法という撮影方法を行います。
ただでさえ時間がかかって患者さんにとっては疲労感も伴う検査を10枚や14枚撮影するわけですから、初めての方は大変だとは思います。
ちなみに同様に全ての歯を観察でき、顎の骨や頭蓋骨の状態まで把握できるパノラマ撮影という方法もあります。
左がデンタルX線写真、右がパノラマエックス線写真です。
パノラマX線写真の、赤枠で囲んだ部分 が左のデンタルX線写真に当たる部分です。
パノラマ撮影はデンタル撮影では確認できない顎関節や上顎洞などの周囲組織を含めた診断をするためには非常に有効な撮影法と言えます。
一方で細部の診査、診断、定点観察という点ではデンタルエックス線撮影に軍配が上がります。
どちらが優れているという話ではなく、検査においては患者様の症状や病態に合わせた、適切な撮影法を選択する必要があります。
デンタル10枚法の例
47歳男性 主訴:噛めないので全体的に治してほしい
青矢印・・・補綴物(被せ物)の適合不良(隙間や段差がある状態)
赤矢印・・・歯石の付着
緑矢印・・・むし歯
青まる・・・根尖病変(根っこの先の病変)
黄色矢印・・・欠損(歯がない状態)
欠損部にはインプラント治療を提案いたしましたが、患者様の御意志により、
ブリッジで対応しました。
根尖病変、歯石、むし歯などの問題を一つずつ解決していき、最終的にブリッジやクラウンにて補綴しました。
治療終了2年後の状態です。よく噛めるようになり、患者さんはとても満足されています。
しかし実は、青丸の部分は根尖病変が縮小傾向にはありますが、完治していません。
症状は全くないため、今後も定点観察をしながらメインテナンスを継続する必要があります。
もし、この部分に悪化の兆しが見られたらすぐに対応するように準備はできております。
患者さんもそのことはよく理解されていますので定期的に(数年に1度)のレントゲン撮影に快く応じていただけます。
本症例の詳細
主訴:噛めないので全体的に治してほしい
診断名:全顎的な歯周病 う蝕の多発 欠損による咀嚼障害
治療期間: 約1年
治療方法:う蝕治療(根管治療を含む)および歯周病治療を行い、歯冠修復治療にて咬合機能の回復を行なった。
デメリット・リスク:治療後は再発や悪化を防止するために継続的な清掃、ブラッシング指導などの口腔管理が必要となります。
まとめ
歯科治療をさせていただくということはの方の今後の一生に関わるということと思います。
そう考えると、レントゲンだけでなく口腔内写真等の臨床における撮影は奥が深いことが分かります。
撮影した画像は患者、術者の両者にとっての共有の財産であり丁寧に管理すべきと考えております。
1枚の写真を見れば、その臨床家の信念が分かると言われた先生がおられますが、
まさにその通りだと思って日々診療に当たっております。
そのため、1枚の写真撮影に誠意を込めて、こだわって撮影をさせていただきます。ご理解いただけると幸いです。
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