症例15 右下大臼歯部にリッジプリザベーションを行いインプラント治療を行なったケース
57歳 男性 右下の奥歯を残して欲しいということでご来院されました。
右下の奥歯2本は前医にて要抜歯の診断を受けたとのことです。
初診時の状態です。
右下に焦点を当ててみましょう。
本ケースは手術中の写真が表示されます
(左図)初診時のレントゲン
可能な限り歯を残す取り組みはしますが、歯根破折(外力による歯根に起こる破折。歯の長軸と交差するように怒る歯根水平破折と、歯の長軸方向に沿って起こる歯根垂直破折があるが、破折の原因や処置方法、予後は同じ歯根破折でも大きく異なる。歯根垂直破折は破折線が歯肉溝と連なり、破折部周囲の歯周組織に炎症が惹起されるため、再結合は起こらず予後は不良である)が認められた場合は難しいかもしれないとお伝えしました。
歯根破折があっても歯の保存を試みるケースはありますが、保存できるかどうかはケースバイケースであり、齲蝕(虫歯)が著しい場合や分岐部病変が絡んでいるケースなどは非常に難しいことがあります。患者様にはリスクについてご説明した上でご納得いただき、被せ物を外させていただくこととしました。
もし歯が残らない場合の補綴方法としては、部分床義歯とインプラントについてご提示したところ、インプラント治療を選択されました。全ての意思決定は患者様自身が主体的に選択していただくようにインフォームドコンセントを実施いたしました。
(右図)右下の奥歯2本の修復物を外したところ
事前に予想された通り歯根破折と二次齲蝕(修復物の周囲から齲蝕が二次的に形成された場合をいい、再発齲蝕と辺縁性二次齲蝕がある。再発齲蝕は、齲蝕の治療で罹患歯質の除去が不十分でなかった場合で、辺縁性二次齲蝕は修復物の不適合、収縮、二次的変形、破折、修復物周囲の歯質の破折、損耗などにより、修復物と歯質のあいだに間隙を生じた場合である)が著しく、感染根管治療を行いつつ、矯正的挺出(歯の長軸に沿って、歯が歯槽から抜け出る方向に移動させる術式)、ルートセパレーション(外科的歯内療法や歯周治療の一法で、複根歯で行われる歯根分離法をいう。閉鎖不可能な髄床底穿孔歯などの根分岐部病変が限局する場合や、髄床底の齲蝕が高度に進行した場合、また誤って髄床底歯質を著しく切削した場合、根分岐部病変で頬舌的に破折を起こした歯において、歯根の太さや長さ、支持歯槽骨の状態から十分に咬合機能に耐えられる場合に行われる。)、歯冠長延長術(十分な臨床的歯冠長を獲得する目的で行う歯周外科治療の手術法。生物学的幅径を考慮し行われる。)など検討しましたが複数の破折線が根尖にまで及んでおり二次齲蝕が高度に進行していたため、残念ながら抜歯させていただくこととなりました。
(左図)抜歯した歯です。歯根破折が複数存在し抜歯の際にバラバラになっています。
(右図)PRGFにてゲル状に固めた骨補填材
抜歯した部位にはリッジプリザベーション(歯槽堤温存術。抜歯後の周囲の歯槽骨および軟組織の吸収を抑える術式)を行いました。
PRGF(成長因子を多く含んだ多血小板血漿)を用いて骨補填剤をゲル状に固めて、再生の条件(足場、細胞、成長因子)を揃える試みを行っております。抜歯窩を徹底的にデブライドメントを行った補填材を填入し、フィブリンメンブレンにてカバーしさらにその上に非吸収性のメンブレンを設置します。
術後4ヶ月待ちます。
4ヶ月後の状態です。歯肉を切開してみるとインプラントを埋入するために十分な骨が維持されています。
(左図)抜歯時
(右図)抜歯およびリッジプリザベーションから4ヶ月後、一次手術時。
一次手術から4ヶ月後に二次手術(インプラント体を埋入した部分の粘膜を一部切開してヒーリングアバットメントを装着し、インプラント体上部を粘膜の上に露出させインプラント周囲に角化粘膜を形成させる手術のことで、補綴上部構造を制作するために必要な手術である)を行いました
(左図)初診時
(右図)治療後。
本症例は自由診療ですが、当院では保険診療にも注力しております。ぜひお気軽にご相談ください。
インプラントのことでご相談であればやまもと歯科にご相談ください。
福山市 インプラント治療 やまもと歯科