症例1 適切な歯冠長の獲得のため歯冠長延長術を行ったケース
55歳男性
左上の奥歯が腫れては潰れるを繰り返していてずっと痛痒い、と訴え来院されました。
第二大臼歯(一番奥の歯)の根尖付近(根の先)の歯肉が腫れているのがわかります。
レントゲン上では根管治療(根の治療)がされていますが根管充填(根の中の詰め物)が不十分な処置がされています。
また、歯髄診では第一大臼歯、第二大臼歯共に失活(神経が死んでいる状態)していました。
対合歯には他院で10年前に埋入されてインプラントが入っており上部構造が脱落した状態でした。
CT撮影を行ったところ、上顎第二大臼歯の近心頬側根の周りの骨が吸収しており、根尖病変を認めたため再根管治療を行うこととしました。
しかし、第二大臼歯治療後、症状が落ち着かず、第一大臼歯に再び歯髄診を行った結果、やはり陰性を示したため、第一大臼歯にも根管治療を行いました。
歯髄は壊死しており、第二大臼歯の病変から上行性歯髄炎(根尖側から歯髄に感染の起こる歯髄炎)を引き起こしたか、外傷性の歯髄炎から歯髄壊死を惹起したと推測しました。
歯周基本治療が終了した状態です。症状は消失したため、補綴物(被せ物)作製を行いますが、
この状態ではスピーの湾曲(歯列を側方から見て、上下臼歯の頬側咬頭頂と犬歯の尖頭および切歯の切縁を結ぶ曲線のこと。通常、上顎歯列は下方に凸彎し、下顎歯列は上方に凹彎している)が逆湾曲を呈しており、また適切な歯冠長が獲得できないため歯冠長延長術(歯茎より上の歯冠部の長さを延長する外科的処置)を行うこととしました。
歯冠長延長術を行いやすくするため第一大臼歯と第二大臼歯の間の歯根間距離を獲得するためゴムにて歯間離開を図りました。
歯間離開前と後の比較です。
その後、通法通り歯冠長延長術を行いました。
初診時と術後の比較です。
今回の処置によって術前の逆湾曲であった咬合平面がゆるやかなスピー湾曲に改善できました。
歯間離開により歯根の近接も改善し、ディスタルウェッジ(第二大臼歯の奥の歯肉の中削ぎ)によって第二大臼歯の遠心の歯肉の厚みも減じることができました。
プラークコントロールを徹底し今後もポケットの再発を防ぐべく、経過観察が必要と思います。
CT撮影においても根尖部の透過像は改善していることが分かります。
歯茎の腫れや痛痒い感覚は消失し、現在は症状なく推移しています。
特別難しい処置ではありませんが、歯内治療と歯周外科を基本に忠実に行うことで良い結果が出たと判断しています。
しかし、今後も歯を守るためには定期的な口腔管理が必須であることは言うまでもありません。
本症例の詳細
主訴 :左上奥歯がよく腫れる
診断名:左上第一大臼歯および左上第二大臼歯 慢性根尖性歯周炎
年齢・性別:55歳・男性
治療期間・回数:約6ヶ月・約15回
治療方法:感染根管治療後、MTMおよび歯冠長延長術を行い修復治療を行った。
デメリット・リスク:
外科処置を伴うため、手術後、まれに唇、舌、頬、歯肉そして歯牙の感覚マヒが一時的に発生する場合もあります。 また、近接歯牙、顎、上顎洞、鼻腔に対する炎症、疼痛、過敏症、組織治癒の遅延及び顔面部の内出血(紫斑や黄斑など)が避けられない方もまれにおられます。 術後、3~4日目になると腫れ止めが切れるため傷口が腫れてきますが、殆どの場合、1週間程度で傷口は治ります。
・術中に、歯や骨の状態により手術内容が予定より変更することも起こりえます。
・喫煙、飲酒は正常な治療の妨げとなります。術後1週間は控えてください。
・処方された薬剤の服用により吐き気、めまい、眠気、咳、お腹が緩くなるなど一時的な副作用が現れることがあります。
・治療後の長期安定性は、口腔衛生状態、喫煙の有無、喫煙者の協力度、咬合力、咬み合わせ、骨量、歯肉量、歯磨きの状態等により変化します。
当院はインプラントや再生療法などの高度な技術を要する治療はもちろん、
歯科治療の基本となる、根管治療、歯周治療といった治療を忠実に丁寧に行います。
歯やお口のことでご相談ならいつでもどうぞ。
福山市御門町の歯医者 やまもと歯科