症例30 右側下顎第二大臼歯の髄床底の穿孔封鎖を行った症例
臨床で遭遇する頻度が高い医原性疾患の一つに穿孔(せんこう)があります。
典型的な症例を一つ提示いたします。
59歳男性。右下奥歯の咬合痛を訴え来院されました。
初診時の状態です。
右下第二大臼歯に根尖病変を認めます。(赤丸部分)
また、緑の丸の部分を見てみると、髄床底(複根歯または多根歯の髄室の底部であり、根管の分岐部)に穿孔(併発症の一種で、歯髄腔から歯根表面に達する人為的な穿通。原因としては、診療器具の不適切な操作などが挙げられる)が認められ、同部に根管充填材様のものが挿入されています。
髄床底の穿孔部のリカバリー処置としては、穿孔部を封鎖するか、穿孔部が大きく閉鎖不可能な場合は歯根分離や、ヘミセクションが行われます。
予後不良な場合は、外科的に穿孔部を閉鎖するか、ヘミセクション、歯根切除、意図的再植法を行うことがあります。
穿孔部が本ケースのように髄床底の分岐部にある場合、歯周ポケットと繋がっているかどうかで、大きく処置が変わってきます。
赤線の方向に本来の近心根管が存在し、根管孔は赤矢印のところにあると思われますが、それよりかなり遠心方向にずれた位置(緑矢印)に人為的に根管形成がなされていることがわかります。
本ケースは穿孔部が歯周ポケットと交通していなかったため、同歯の症状を改善するためには、穿孔部を拡大・清掃し、確実に封鎖すること、そして、本来の根管を見つけ出し、適切に根管拡大することがポイントとなります。
穿孔部を見つけることができました。(緑矢印)
穿孔部(緑矢印)をMTAセメントで封鎖したのち、
本来の根管(赤矢印)を根管形成し、根管充填します。
治療前と約1年後の状態です。
穿孔部の透過像は改善傾向にあります。
根尖部の透過像は消失していることが確認できます。
経過は浅いですが、症状もなく安定しております。
根管治療は本ケースのように、様々な障害をクリアする必要がある場合があります。
根管治療でお悩みの方は当院までお気軽にご相談ください。
マイクロエンド(マイクロスコープを用いた精密な根管治療)のことなら 福山市の歯医者 やまもと歯科 まで
本ケースにおける詳細
主訴 :食事中に右下の奥歯が時々痛い
診断名:右下第二大臼歯 慢性根尖性歯周炎、髄床底穿孔
年齢 : 59歳(初診時)
性別 :男性
治療期間・回数: 約3ヶ月・7回
治療方法:右下第二大臼歯に、感染根管治療後、支台築造を行い、歯冠修復を行った。
費用:110,000円
デメリット・リスク・注意事項
根管の形態が複雑な場合や歯根破折が認められる場合は病態が治癒しない場合があります。
根管治療により、術中、術後に痛みや違和感が出現する場合があります。
通常の根管治療において奏功しない場合、外科的処置や抜歯が必要になる可能性があります。
歯根破折が起き抜歯が必要となる可能性があります。
補綴装置は経年的に磨耗または破損することがあり再製作が必要となる可能性があります。
根管治療により類似の全ての症例の問題が解決するわけではなく、あくまでも一例です。