症例5 骨縁下欠損を有する慢性歯周炎患者に対して エムドゲイン®︎を用いて歯周組織再生療法を行った症例
60歳女性 他院で下の奥歯の抜歯を宣告された患者さんです。
来院時、できるなら抜きたくないと涙ながらに切実に言われてました。
下の奥歯を保存(歯を抜くことなく、いつまでも自分の歯で噛めるように治療を行い、大切な歯を口の中に維持、保存し機能させていくこと)するためには歯周組織再生療法が必須であると説明し、エムドゲインを用いた再生療法を施術させていただきました。
左下の一番奥の歯は歯周病により、歯槽骨(歯を支える顎の骨)が喪失し、歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝の深さ。健康な場合3mm以下)が8mmある状態でした。(◯で囲った部分)
また歯石の沈着も著しく、歯槽骨が減少している原因であると考えられました。(青矢印の部分)
噛み合わせや清掃性が不適切な白いクラウン(被せ物)が装着されておりました。
歯周基本治療(基本的な歯石とりや、歯磨き指導など)が終了した状態です。
歯周ポケットと歯肉の炎症が一部残存したため、歯周外科を行うこととしました。
今回は歯周組織の再生を図るため、エムドゲインという薬液も用いて行いました。
エムドゲインはビオラ社により発売されているエナメルマトリックスデリバティブを主成分とする歯周組織再生誘導材料です。
スウェーデンのカロリンスカ研究所で、ビオラ社の創立者のDr.Hammarstromらにより開発されました。
現在の科学水準に基づく高い安全性確保の下、幼若ブタの歯胚から抽出精製したもので世界44ヵ国以上で使用されています。
日本では1998年に厚生労働省の認可がおり、2002年に改良版であるエムドゲインゲルが認可されていいます。
歯肉の内面に歯石の取り残しが認められます。
デブライドメント(歯肉縁下のプラーク、歯石、汚染歯根面、不良肉芽組織を除去すること)を徹底的に行っていきます。
縫合し、治癒を待って被せ物の治療を行います。
初診時と治療後、2年後の状態の比較です。骨が再生してきている様子が伺えます。
噛
患者さんは全体的に再生療法を行ったおかげで、もう諦めていた歯を1本も抜くことなく、しっかり噛めるようになったので大変満足されていました。
しかし、
この状態を維持するためには定期的な清掃やブラッシング指導などの口腔管理が必須となります。
これで治療が終了したのではなく、ここから長い長いメインテナンスロードが始まったと思って下さいと、患者さんにはお伝ええさせていただいてます。
本症例の詳細
主訴 :歯を残して欲しい
診断名:広汎型慢性歯周炎(ステージⅢグレードC), 二次性咬合性外傷
年齢・性別:60歳・女性
治療期間・回数:全体的な治療を含み約1年・約20回
治療方法:歯ブラシ指導や歯石とりなどの歯周基本治療後、エムドゲインを用いた再生療法を行い、口腔機能回復治療を行った。
デメリット・リスク:
外科処置を伴うため、手術後、まれに唇、舌、頬、歯肉そして歯牙の感覚マヒが一時的に発生する場合もあります。 また、近接歯牙、顎、上顎洞、鼻腔に対する炎症、疼痛、過敏症、組織治癒の遅延及び顔面部の内出血(紫斑や黄斑など)が避けられない方もまれにおられます。 術後、3~4日目になると腫れ止めが切れるため傷口が腫れてきますが、殆どの場合、1週間程度で傷口は治ります。
・術中に、歯や骨の状態により手術内容が予定より変更することも起こりえます。
・喫煙、飲酒は正常な治療の妨げとなります。術後1週間は控えてください。
・処方された薬剤の服用により吐き気、めまい、眠気、咳、お腹が緩くなるなど一時的な副作用が現れることがあります。
・治療後の長期安定性は、口腔衛生状態、喫煙の有無、喫煙者の協力度、咬合力、咬み合わせ、骨量、歯肉量、歯磨きの状態等により変化します。
歯周治療は非常に地味で患者さんにとっては根気のいる治療ですが、頑張ればそれなりに結果は出せます。
歯やお口のことでお悩みの方は やまもと歯科 へぜひご相談ください。
福山市 御門町の歯医者 やまもと歯科